アルミ展伸材の呼称記号

アルミニウム合金は、展伸材と鋳物材に大別できますが、
それぞれは材質や形状等によって分類され、記号や数字による呼称記号がつけられています。
ここでは、展伸材の呼称記号とその意味をご説明します。

• 1材料記号

  アルミニウムおよびアルミニウム合金であることをAで表しています。

• 2合金記号

  JISの展伸用アルミニウム合金の種類を表す番号は、AA（アメリカ・アルミニウム協会）番号を基本として、4桁の数字で表されますが、それぞれの桁は次のことを表しています。

  • 第1桁（1000番台）

    主要添加元素により1～9に大別され、下表のように表されます。

    1000番台	主要添付加要素
    1×××	純アルミニウム
    2×××	Al-Cu系合金
    3×××	Al-Mn系合金
    4×××	Al-Si系合金
    5×××	Al-Mg系合金
    6×××	Al-Mg-Si系合金
    7×××	Al-Zn-Mg系合金
    8×××	上記以外の系統の合金
    9×××	予　備

  • 第2桁（100番台）

    0～9の数字が使われますが、0は基本合金を、また1～9は改良合金・派生合金を表します。純アルミニウムの場合に限り、0は不純物について特別の規制のないことを示し、1～9は1種類またはそれ以上の不純物について特別の規制があることを示します。なお、日本独自の合金あるいはAAの規格以外の合金は数字の代わりにNであらわします。

  • 第3・4桁（1～99番）

    純アルミニウムの場合は、アルミニウムの純度を小数点以下2桁で示します。合金については、旧アルコア規格呼称の合金数字で示します。日本独自の合金については合金系別制定順に01～99の数字で表します。

• 3形状・等級記号

  • 形状記号

    板、形材、管などの形状を表す記号でJISにより、英語またはローマ字の頭文字を使って下のような記号で表します。

    形状 記号	形　状	備　考
    P	板、条、円板	Plate
    PC	合せ板	Plate（clad）
    H	は　く	Haku
    BE	棒（押出）	Bar （Extruded）
    BD	棒（引出）	Bar （Drawn）
    W	線	Wire
    TE	管（押出）	Tube（Extruded）
    TD	管（引抜）	Tube（Drawn）
    TW	管（溶接）	Tube（Welded）
    S	形　材	Shape
    FD	鍛造品（形打）	Forging（Die）
    FH	鍛造品（自由）	Forging（Hand）
    PB	導体（圧延板）	（Plate）Bus Conductor
    SB	導体（押出板）	（Shape）Bus Conductor
    TB	導体（管）	（Tube）Bus Conductor

  • 等級記号

    管、棒、線、導体については、同一種類のものでも寸法許容差の程度により、普通級と特殊級の2等級に分け、特殊級のみSをつけて表示します。

• 4質別記号

  展伸材では冷間加工や熱処理によって、強度や成形性などについて所定の性能を得ることができます。これを調質といい、調質の種類を質別といいますが、JISではこれを下表のように示します。

  質別記号	定　義	説　明
  F	製造のままのもの	特に調質の指定なく製造された状態を示す。 （機械的な性能を定義しない）
  H112	熱間加工上りのもの	積極的な加工硬化を加えず、製造されたままの状態で機械的性能を保証したもの
  O	焼なましたもの	最も軟らかい状態を得るように焼きなましたもの
  H	加工硬化したもの	冷間加工で硬化したもの
  H1X	加工硬化のみのもの	冷間加工で調質したもの
  H2X	加工硬化後、軟化熱処理を加えたもの	H程度まで冷間加工後焼きなましによって調質したもの
  H3X	加工硬化後、安定化処理をしたもの	冷間加工で調質後、低温加熱による安定化処理を加えたもの
  T2	高温加工より冷却後、冷間加工をほどこし、更に自然時効させたもの	押出材のように高温の製造工程から冷却後、冷間加工を加え、更に安全な状態まで自然時効させたもの
  T3	溶体処理（焼入れ）後、冷間加工をほどこし、更に自然時効させたもの	溶体化処理後、冷間加工（強度の向上と平坦度、寸法精度の向上の為）を加えさらに安定な状態まで自然時効させたもの
  T4	溶体処理後、自然時効させたもの	溶体化処理後、積極的な冷間加工を加えず、安定な状態まで自然時効させたもの
  T5	高温加工より冷却後、人工時効処理（焼戻し）したもの	押出材のように高温の製造工程から冷却後、積極的に冷間加工を加えず人工時効処理したもの
  T6	溶体化処理後、人工時効させたもの	溶体化処理後、積極的に冷間加工を加えず人工時効処理したもの
  T7	溶体化処理後、安定化処理をしたもの	溶体化処理後、応力腐食割れ性改善などの特別な性質を調整するために過時効処理したもの
  T8	溶体化処理後、冷間加工をほどこし、更に人工時効処理したもの	溶体化処理後、強度を増加させるために冷間加工を行い、更に人工時効処理したもの
  T9	溶体化処理後、人工時効処理し、更に冷間加工したもの	溶体化処理後、人工時効処理し、強度を増加させるために更に冷間加工したもの

  ※表中のXは、2、4、6、8などの数字で示され、加工硬化の程度を示す。すなわち8は硬質材、4は0と硬質材の中間（1/2硬化）の加工硬化状態であることを示す。
  2、6はそれぞれ0と1/2硬質、1/2硬質と硬質の中間の加工硬化状態であることを示す。